2018年最新の毛髪再生医療を知る!脂肪幹細胞で未来・将来の発毛へ!

目次
今回は、2018年10月における、最新の毛髪再生医療について詳しくみていきましょう。
今、研究が進んでいるのは脂肪幹細胞(しぼうかんさいぼう)による発毛です。
AGAに対する治療薬として近年扱われているのはプロペシアやミノキシジルになりますが、近い将来は人間の細胞をコントロールした育毛がとってかわり、次世代の薄毛やハゲを治す新治療に変わるかもしれません。
脂肪幹細胞とは
まず脂肪幹細胞の前に、全体の幹細胞の図を見ていきましょう。
人間の体内には60兆個とも言われる細胞があり、その細胞の集合体でそれぞれの各組織が成り立っています。
幹細胞は、皮膚や血液にある細胞の中でも、組織を維持する為に細胞が減少しても、同じ細胞を生成し維持又は再生する機能を持っています。
幹細胞の大きな役割は2っ。
- 自己複製能といって、幹細胞が自分と同等の能力のある細胞に分裂する事が出来ます。
- もう一つは多分化能といって、赤血球や血小板などの組織の細胞を生成する機能です。
例えば、病気や怪我によって体の組織が損傷したとしても幹細胞の働きにより組織が再生する仕組みです。
幹細胞を大きく分けると2種類
一つは、体性幹細胞(組織幹細胞)と言われ、各組織でのみ細胞としての役割を担える幹細胞です。
血液を作る事だけ出来る造血幹細胞、神経だけをつくる事が出来る神経幹細胞などが例です。
もう一つは、自分の体の中のどの細胞でも生成する事ができる多能性幹細胞(たのうせい)です。例えばES細胞(胚性幹細胞:はいせい)といって、胚盤胞期(はいばんほうき)の受精卵から生成される100個程度の細胞の塊で、どんな細胞にも分化できる幹細胞。
他にもiPS細胞と言われ、皮膚などの細胞に特定の遺伝子を組み込み生成された細胞で、人工的な培養も可能な細胞。
こちらは皆様もご存じの2012年にノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥京大教授により発見された「成熟細胞が初期化され多能性 (pluripotency) を持つことの発見」を指す。
デジタル大辞泉の解説
アイピーエス‐さいぼう〔‐サイバウ〕【iPS細胞】
《induced pluripotent stem cell》万能細胞の一種。幹細胞と同様に増殖して各種の細胞へと分化することが可能な細胞。平成18年(2006)、山中伸弥らがマウスの体細胞に初期化因子とよばれる数種類の遺伝子を導入することで、初めて作製に成功。ES細胞は受精卵から採取して作るため倫理的に問題があるが、この細胞は皮膚細胞などから作り出すことができる。また、自分の体細胞から臓器などを作れば拒絶反応を回避できるため、再生医療への応用が期待される。誘導多能性幹細胞。新型万能細胞。人工多能性幹細胞。
[補説]頭文字の小文字の「i」は、当時流行していた米国アップル社のデジタルオーディオプレーヤー、iPodのように世界中に普及してほしいという山中の願いから付けられた。
中でも体性幹細胞の、骨や軟骨、脂肪などの組織を構成する間葉系幹細胞で分化能力が非常に優秀な脂肪幹細胞の研究が再生医療として注目を集めているのです。
参考文献:ステムサイエンス ファクトブック PART2 “脂肪幹細胞” | ロート製薬株式会社
最先端!これが最新の毛髪再生医療!
近年の発毛業界におけるAGA治療法としては、服用する治療薬プロペシアや外用液で塗布するミノキシジル、Ⅰ型5αリダクターゼも阻害するザガーロ経口薬などが一般的です。
しかし、脂肪幹細胞による毛髪の再生医療をご存知でしょうか?
先程、幹細胞についてはご説明させて頂きましたが、ここではどのように毛髪が再生するのか解説していきます。
まず脂肪を採取して幹細胞を抽出します。
この中で、細胞を活性化させる成長因子(グロースファクター)を抽出し、頭皮へ注入します。
すると毛根に存在するバジル領域と呼ばれる領域内の毛包幹細胞に作用して細胞が活性化、発毛やヘアサイクルが改善されるようになるのです。
脂肪幹細胞による発毛効果!
脂肪幹細胞を頭皮に注入する事で、頭皮が健やかになり新たな血管が生成される事も分かっていて、以下4っの事から発毛を実感出来るようです。
- 1脂肪前駆細胞の活性化
- 休眠している毛包幹細胞に幹細胞を注入する事で、毛根の周りにある脂肪前駆細胞(脂肪になる前の段階の細胞)が活発になります。
成長因子が分泌される事で毛包幹細胞が刺激を受け、毛包が活発化しヘアサイクルの移行(休止期→成長期)を促します。
- 2新血管の形成、血流の改善
- 血管が細すぎたり血液の流れが悪いと、毛包まで栄養が届かず休眠してしまいます。
しかし幹細胞を注入する事で、血管が生成されます。
新生された太い血管が血流を改善、血液が頭皮を巡り栄養を毛包まで行き届かせるので毛包幹細胞の細胞分裂を活性化させます。
- 3頭皮に脂肪がなじみ、地肌が柔らかくなる
- 頭が硬いのは抜け毛の原因と見られていて、脂肪が少ないのは血行が悪いのが原因とも考えられています。
脂肪も注入する事で脂肪層の増加、脂肪前駆細胞がバジル領域内の毛包幹細胞を刺激して髪の毛が生えやすい環境になります。
- 4炎症を静めて、環境を整える
- 頭皮にある毛根の炎症は、外部の紫外線によるダメージや化学物質のかぶれ、
内部の皮脂の過剰分泌(マラセチア菌の異常繁殖)、不規則な生活によるものです。
幹細胞を注入する事で、成長因子が活発化し炎症を抑えるので毛根が健康に、頭皮の環境が改善され発毛に適した状態になります。
如何でしょうか。
脂肪幹細胞を頭皮に注入すると、上記4っの発毛メリットが挙げられます。
脂肪幹細胞は自分の細胞を注入するので、拒絶反応のリスクも低い為、副作用が少なく安全・安心に利用できる再生医療と呼べるのではないでしょうか。
しかしネックなのが治療費である。
7回程の通院で費用は60万円前後。
まだ一般の方には手が出しにくい治療ではあるが、いろいろなクリニック店が始める事で恐らく価格も下がっていくだろう。
費用にも注目していきたい。
参考文献:ケラステム毛髪再生(幹細胞による毛髪再生治療) | 聖心美容クリニック
その他にも脂肪幹細胞以外では下記のような再生医療が日本のクリニック店で治療が始まっているようです。
HARG(ハーグ)療法
幹細胞を抽出して成長因子や、ビタミンなど150種類をカクテル(成長因子が含まれてる薬液)して頭皮へ注入する【HARG療法】もあります。
BENEV(ベネブ)療法
アメリカのベネブ社がFDA(食品医薬品局)の認可を受けた医療法。
カリフォルニア州の組織バンクより調達した包皮幹細胞の中に含まれる前駆細胞内のヒト由来成長因子を頭皮に針で注入する再生医療。
KGF(FGF-7:ケラチノサイト増殖因子)やIGF(インスリン様成長因子)、HGF(肝細胞増殖因子)などの成長因子をスキンスタンプ(2cm四方)と呼ばれる140本もの極細針で頭皮へ注入していくので毛根を活性化し発毛しやすい環境に整います。
成長因子には下記が含まれます。
(GM-CSF、HGF、IGF-1、IL-6、IL-7、IL-8、KGF、PDGF-AA、TGF-B3、VEGFなど)。
ロート製薬から脂肪幹細胞ミノキシジルが発売?!
2018年10月9日、日本経済新聞によるとロート製薬がミノキシジルを発売すると発表している。
そのきっかけとなったのは、下記の内容によるもの。
「ミノキシジルが脂肪由来間葉系幹細胞に働きかけ、毛の伸長に重要なFGF-7、血管誘導に重要なVEGFA、発毛に重要なPDGFAの発現を亢進(こうしん:高い度合いに進む事)することを発見しました。」
2018年内にミノキシジルに、脂肪幹細胞の効果を高める物質を配合した新たな育毛剤を発売する。
これはロート製薬が2006年から研究を進めていた事で、ヘアサイクルからスタートさせ、前駆脂肪細胞由来の成長因子の研究や幹細胞が枯渇化することで毛包が消失の発見などを経て、2013年からは脂肪由来間葉系幹細胞の研究へ。
そしてミノキシジルには、人間の髪の毛が作られる毛球部の脂肪由来間葉系幹細胞に働きかける事でFGF-7の発現促進作用がある事が分かったのです。
脂肪由来間葉系幹細胞
これは前述した脂肪幹細胞の事で、間葉系幹細胞に属する分化能を持っている細胞。
脂肪幹細胞は組織の修復をしたり成長因子を分泌したりする細胞なので頭皮へ注入する再生医療としても注目されていますが、今回はミノキシジルが脂肪幹細胞に働く事でFGF-7が発毛を促進する事も発見されたのですね。
FGF-7(繊維芽細胞増殖因子)
FGF-7はKGFの事です。
ケラチノサイト増殖因子になるので、先程のBENEV療法で注入する成長因子です。
FGFは23種類もあり、発毛としての作用があるのは7番目のFGF-7だけです。
毛母細胞の分化と増殖の促進が役割なので、脂肪幹細胞から働きかける事が分かったのは重要な発見と言えます。
VEGFAは、血管の新生に関与する血管内皮細胞増殖因子。
PDGFAは、間葉系細胞の調整に関与したり、上皮や内皮細胞から産生される血小板由来成長因子。
ロート製薬は、大正製薬のリアップx5やアンファーのメディカルミノキ5の主成分ミノキシジルだけではなく、脂肪幹細胞の効果を高くする成分を配合するミノキシジルを発売とあって非常に楽しみである。
再生医療程の高額ではないAGA治療薬ミノキシジルは一般庶民からしても手が届きやすいので嬉しい限りです。
脂肪幹細胞の再生医療、危険なトラブルも!
日本の発毛クリニック店では、まだ100店舗程ではあるが幹細胞治療を行っているクリニックがある。
しかしこの脂肪幹細胞治療、適切な注入量が分かっていない為、重大な副作用に見舞われる事もある。
日本の医療業界では、医師の裁量が大きく認められている為に、自由診療として患者が全額自己負担をすれば、まだ研究段階の治療にも手が出せる。
医療事故としては、失明やしこりが出来て治らないなどの他に、死亡したケースもある。
本来は動物のネズミや豚などで臨床試験を繰り返し為しながら投与していくのだが、投与量を間違えると動物でも死んでしまう。
多量に入れ過ぎで事故に繋がるケースは少なくないが、少量過ぎても副作用で問題が起きるのは、幹細胞治療の難しい所です。
世界では、欧米や中国、韓国でも医療規制の取り締まりが厳しく、日本だけが無法地帯と言える。
それでも日本の安心出来る最先端医療だからこそ、幹細胞治療にやってくる世界中の人々がいる。
大きい利益を追求しすぎて安易に治療を行う医師、よく調べずに医師だからと安心して治療を受けてしまう患者、充分に気を付けながら安心出来る適切な治療を行い、将来の日本医療の発展を願いたいと思います。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
2018年10月17日 高橋 優一